こしかたぞ月日にそへてしのばるる又めぐりあふ昔ならねば
北条政村
過ぎ去った時が、月日が経つにつれて偲ばれる
また巡り逢うことのできる昔ではないから
pm4:30
20人ほどが入ることができる会議室。
ひとり、ノートパソコンに向かっている。
机の上には様々な色のファイルや、書類、ペンなどが散乱している。
キーを叩く手を止め、背伸びをする。
両足を隣の椅子に伸ばし、
眼鏡を外し、右手側を見る。
ビルの角にあるこの部屋は2面が広い窓になっている。
窓を二分割する空とビルの林。
透明感のある、それでいて春の柔らかい青空。
かなり水平に近い斜光がビルたちを
妙にリアルな立体感のあるものにしている。
パソコンの画面ばかり見ていた所為か軽い眩暈を感じる。
18年前の今日、親友が空へ帰った。
ラブソングで悪いがWhite Snakeの
Now you’re gone.のフレーズが口に出る。
毎年、春分の日にはガレージの棚に置いてある
彼と自分が並んでいる写真に缶ビールを供え、一緒に酒を飲む。
“缶ビール、買いに行かなきゃな。”
そんなことを考えながら、眼鏡をかける。
今日と明日。
静かな哀しみに満たされる日。