「よくさ、結婚が男と女のゴールって言うじゃない?」
目の前の芋焼酎のロックが入った素焼きの湯呑みを振りながら君は言う。
「ああ、そうだな。」
俺は芋焼酎の濃い水割りを飲み干しながら返事をする。
近くにいた店員のお姉さんに同じ銘柄、『櫻井』のおかわりを頼む。
「なんか、それもアリだけど、私たちのもゴールって気がするのよね。」
「なんで?」
「お互いのこと・・・今何をしてるとか、何に夢中になっているかとか、
どんな人と結婚してるとか、どんな人と付き合っているかとか、
どんな事に悩んでいるとか、全部解っていて、それでもセックスは無しで、
こうやっていろんなことが話せる異性の友達っていうのが。」
「んー、確かにあんまりこんな関係は聞かないけど、そうかもね。
でもゴールって最後の最後って気がするなぁ。まだ俺らはコースの途中。」
「いつがゴール?」
「俺が死ぬ時。」
「『どっちかが』でしょ。怒るよ。」
「・・・ごめんなさい。」
「でも、お互いあの世に行って、乾杯してゴールかな?」
君はそう言って、目の前に酒を掲げる。
「そうだな。」
そう言って、湯呑み同士を軽く当てて乾杯。
確かに、君の言うとおり、この一瞬がイイって思える。