「ほっ」と。キャンペーン

贈り物。

「ね、プレゼントは何がいい?」
突然彼女はそう言った。

休日の歩行者専用のアーケード街。
両脇にブランド物の店が並んでいる。
そこを彼女の買い物に付き合いながらブラブラ歩いていた。

「え?いらないよ。」
急な申し出に戸惑いながらそう答える。
「何か贈りたいの。それにいつも食事とかそっち持ちでしょ?」
「いいってば。飯ぐらいは男が奢るのが常識。」
「じゃあ、女のお願いをきいてくれるのも男の常識で。」
「そんな勝手な。」
と言いつつも、彼女に口で勝てたことは無いのを思い出していた。

「それに、私だってちゃんと稼いでいるんだし。
あ、CD一枚とか本一冊じゃ駄目よ。」
さすがに、しっかり見透かされていた。
「じゃあ、本2冊・・・」
「何か言った?」
上目遣いに軽くにらんでくる。

「え~、他に何も浮かばないって。」
「考えなさい。」
「んー、プレゼントって、普通、欲しい物を聞くんじゃなくって贈り主が選ばない?」
「・・・まあ、そうね。じゃあ、私が選ぶわよ。」
彼女はうんうんと頷きながら周りを見渡して考え込んでいる。

「あ、そういえば、コロンだっけ?トワレだっけ?
どっちにしてもずーっとつけてないわよね。」
「うん、一度切れてからなんとなく買いに行くのが面倒になっちゃって。
って、まさか。」
「なんだっけ?あれ・・・・。」
「えー、いいよ!悪いって。」
トワレとしてみれば、高くない値段だが、
女性からのプレゼントと考えるとうろたえてしまう。
「いや、止めよう!あ、そうだ、キャップとかが欲しいなぁ・・・。」
必死に抵抗を試みようとしたが、
「もう、遅い!・・・あ、diorのファーレンハイトだったわよね。
 えーと、diorが入っているのは・・・あそこだ!」
と、彼女は人の腕をつかみ、ズンズンという形容詞さながらに歩き出す。

デパートの1階。
diorのブースで彼女は店員にオーダーを伝える。
商品を梱包するまでと勧められた椅子に二人で座った。

「本当に、いいの?」
諦めで脱力感のなか、おずおずと聞く。
「いいの。もう買っちゃったし。」
ニッコリと笑って彼女は言う。
そこに店員がdiorの小さな紙袋を持って現われた。
「ありがとう。」
そう言って受け取った紙袋を、俺に差し出す。
「はい、プレゼント。」
「ありがとう。うれしいよ。」
正直、強引に決められたけど、かなり嬉しい。

「うん、私が贈った香りをつけてくれるって、嬉しいね。」
「そう?」
「うん。」
「じゃあ、二人で出かけるときだけつける?」
「それは駄目。いつもつけてて。」
「なんで?」
「うーん。動物のマーキングと一緒ね。私の縄張り!私のもの!みたいに。」
その言葉に吹き出してしまった。

「なるほどねぇ。匂い付けかぁ。」
「うん。だからこの香りを嗅ぐと幸せな気持ちになると思うの。」
彼女はそう言って香水の香りが立つように、ふわっと微笑んだ。
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by curtis_01 | 2008-01-06 16:04 | 徒然草
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