5年前に―輪廻―

昨日に引き続き、長文。
実は、前に書いたお話を入れていたメモリーが見つかったんで。
これは、一昨年書いたお話かな?
おヒマな方はどうぞ。
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ここかなぁ?

峠の麓にあったコンビニ。
夜を彷徨う自分達の明るいオアシスだ。
ハンドルを左に切り、店の前の駐車スペースにクルマを停める。

店の前に緑のポストがある。やすさんに教えてもらったコンビニに間違いない。
店に入り、ブラックの缶コーヒーを手に取り、レジで店員に聞く。
「あの緑のポスト、“5年前に送るポスト”?」
店員はニヤッと笑い、
「そうっすよ。お客さんも探してきたんすか?この頃、そういうお客さん多いんすよぉ。」
「そっか、ありがとうね。」
色々聞きたそうな顔をした店員には悪いが、そそくさと礼を言って店を出る。

幌をオープンにしたクルマのグローブボックスから手紙を取り出す。
手紙をじっと見つめ、本当に投函するか悩む。


『Sさんへ。
君のダンナです。とはいっても5年後の僕だ。
何をふざけたことと思わないで。信じてもらえるようなことを書こう。
僕は10月16日に、夜遅く仕事から帰ってきて君に言うはずだ。
「健康診断で、肝機能の数値が悪く、明日病院に行く」と。
もし、言わなければ、この手紙を捨ててしまってもいいよ。
でも、それを言った後でも、5年前の僕にはこの手紙を見せないで。訳は後で書く。
 
 さて、僕の書いたとおりになったと思う。
 本人はまあ飲みすぎだろうと思っているみたいでしょう?
だけど、僕は1週間後に検査結果が出て、翌日25日に緊急入院することになる。
B型肝炎急性増悪だ。
4年前に母さんが慢性肝炎で入院したのと一緒。生まれるときに母子感染だったんだね。
そう、5年後の僕には今までの経過がわかる。
入院したときに君に一番心配をかけると思うから、これを書いた。
僕はこのあと、2000年中に危険なところまでいく。
しかし、病院の先生は優秀で、心配は要らない。大丈夫だ。
ただね、この5年間で4回入院することになる。
その度に薬もいいのが出るし、元気にやっていけるようだ。
治療薬が凄く高いけどね。
 
それにしても、ごめんね。
平日は12時を過ぎてからでないと帰ってこないし、朝は6時には家を出て行って、
土日も仕事に行っているか、クルマで遊びに行って、家に居なかったね。
君とじっくり話をするなんて、結婚してから記憶にあんまり残ってないくらい。
それなのに・・ね。

僕にこの手紙を見せないで欲しいのは、
これから僕は様々なことで不安の中で悩む、苦しむ。
それを助けてやって、なんて言わない。

沢山、苦しまさせてほしいから。
そうじゃないと、一番大切なものに気がつかないと思うんだ。
今だって仕事のこと、クルマの事しか言わないでしょう?
病状が危険なところに行って苦しみ悩むことで、
はじめて気づくはず。それじゃないと半端な人間のままだ。
5年後の今だって半端モンだけどね。
そして、入院中に「君といっぱい話をしたのは、結婚してからはじめてじゃない?」
なんて言ったら大丈夫だ。

5年後の今、子供達は凄く元気で、デカクなってる。
君は相変わらず綺麗で、可愛い。ほんの少し、ダイエットはしたほういいかも。
そして、僕は君のことを心から愛している。ホントだ。
それでは、これからも我侭な僕をよろしく。
  
追伸 5年後、M2 1001が二台体制になっているけど、諦めてね。』
  

うん、と頷いて、ポストに封筒を入れる。
不思議なことに物の落ちる音がしなかった。
まるで、どこか別な所に行ったような感じだ。

“家に帰ろう。”

エンジンを掛け、駐車スペースを出る。
アクセルを踏み込み、ノーズを来た道へ向ける。
ふと、M2 1001初号機を買い戻したとき、妻の言った言葉を思い出した。

「やっぱりね。知ってたわ。」

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2007年の今じゃあ、01は1台に戻って、クロモリ自転車3台。
これもカミサンは知っていたかな?(笑
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by curtis_01 | 2007-02-02 23:36 | M2 1001
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