見方。景色。

UN AUTHORIZED 33rpmを漕ぎ出す。
隣の市まで、親父が出展している水墨画の展覧会へ向かう。
彼が定年して急に、昔からやりたかった水墨画と表具師として勉強を始め、
今では結構楽しみながらやっている。
ただ、彼にとっては、自分が一番口うるさい評論家になっているらしいけど。

秋の日差しが、尾花の穂を輝かせる。
日陰を通り過ぎると、ひんやりした空気が汗をかいた身体を包む。
久しぶりに自転車に乗っている所為か、リズムを取り戻すまでちょっと辛い。

展覧会を行っている会場は、和歌に詠まれている小川のほとり。
蔵を改造している建物だった。


みちのくの緒絶の橋やこれならんふみみふまずみ心まどはす
                          藤原 道雅
  みちのくの緒絶の橋はこれだったのか。 
    橋の緒が切れてしまわないかと、
      踏み出そうか、踏み出すまいかと心を惑わすものです。

      『文を見たり(いただいたり)、
       文が見れなかったり(もらえなかったり)、
       あなたとの縁が途絶えてしまわないかと、心を惑わすものです。』


木の塀に33rpmを立てかけ、広く開かれている入り口から中に入る。
明るい日差しが木のフロアから柔らかく反射され、
表装された水墨画に彩を添える。
親父が出展してからこの展覧会には毎回顔を出しているが、
皆さんの楽しみながら真剣に描いているのが伝わってくる。
親父の絵は表装も自分でやっている所為か、なかなか良い物だった。

会場を後にして、公園と隣接している神社を訪れた。
以前、桜が満開のときに来たのだが、
流石に今の季節では、誰も居ない。
桜の老木が並んでいる辺りは、柔らかな草が地面を覆い、
誰も此処に足を踏み入れていないのが解る。
石のベンチに腰を下ろし、ペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲む。

自分が座った向こう側に、苔むした石灯籠、石のベンチ、桜の老木。
柔らかい草に覆われた地面。そして明るい木漏れ日。
緑の景色。

綺麗だと思った。

バックパックから、ローライ35TEを取り出す。
二十数年前のマニュアル式カメラだけにピントは目測で大体合わせるだけ。
露出だけファインダーの中のLEDで合わせ、フレームを決める。
シャッターボタンを押した瞬間、携帯電話のワザとらしいものと違う
「カシャッ」という小さい機械が動く音がする。

ゆっくりと時間を過ごす。
ふと、あることを思いつきバックパックにまた荷物を収め、33rpmに跨る。

次に向かったのは、彼岸花、曼珠沙華が群生している丘だ。
暫らく走り着くと、思っていたように
細い幾筋から成る赤い花と緑の茎が一面に、
美しくも怪しい景色が広がっている。

33rpmを柵に立てかけ、ここでもローライを取り出し写真を撮りだす。
なるべく絞りを小さい数字にして花をはっきり撮れるよう試みる。
果たして、どんな写真になるのか?
凄く不安ながらも、楽しいのだ。


見方。
景色。

自転車と、カメラが与えてくれた楽しみ。
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by curtis_01 | 2006-09-30 19:57 | 自転車
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