秋の長雨に。

雨ふれば軒の雫のかずかずに思ひみだれてはるるまぞなき
                            藤原公継

  雨が降れば、軒から落ちてくる雫の、
   その数々ほどに思い乱れて我が心は晴れる間がない。


建仁二年の旧暦九月十三日夜、
後鳥羽院が水無瀬の離宮で開いた歌合で、
『寄雨恋』つまり、雨に寄せての恋の題で歌われたものです。

歌合においてこの歌は、対歌のほうが言葉の遣いかたが
艶っぽいということで負けたのですが、
私は歌の内容では、勝った耐え忍ぶ姿の歌より、
この想い乱れた自分自身を見つめる、その静かな視点が好きです。

果たして自分自身の求めるものは、なかなかに自分で気づかない。
それだからこそ彷徨い、心乱れる私自身を振り返り、この歌に惹かれるのです。

さて、歌合でこの歌に勝ったほうの和歌も載せておきましょう。
秋の長雨の夜。
雨に寄せる恋歌に思いを馳せるのも一興でしょう。


ふりにけり時雨は袖に秋かけていひしばかりを待つとせしまに
                            俊成卿女

  袖に秋の時雨は降り注ぐ・・・。
    「秋にかけて」と貴方が言われたその言葉を待っていた間に
      その約束は古くなり(ふりにけり)、無くなってしまった。
  袖に涙が降り注ぐ・・・。
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by curtis_01 | 2006-09-13 22:15 | 徒然草
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